現代の社会において、
残業は企業文化として
根深く根付いています。
そして、多くの人が知らないうちに、
この残業文化は子供の頃から
始まっているのかもしれません。
学校教育における宿題、
特に家で準備し
学校に提出する必要のある課題が、
社会におけるサービス残業と
同様のメカニズムで子供たちを
「残業人間」に育てているのです。
・提出物としての宿題の問題
宿題には様々な種類がありますが、
特に問題なのは家で準備し、
学校で提出しなければならない課題です。
例えば、作文やレポート、調べ学習、日記など、
家で行い翌日以降に提出する形式の宿題です。
こういった課題は、
子供たちに自主的な学びを
促す意図がある一方で、
企業の残業文化と似た構造を持っています。
これは、次の日に提出するという
「締め切り」がある点で、
学校の外で時間をかけて
完成させなければならない
仕事と共通しています。
この「家での提出物宿題」が
引き起こす最大の問題は、
子供たちが学校の時間内で
完結できるはずの学びを、
家に持ち帰らせるという点です。
宿題をやる時間は、
子供にとって「仕事時間の延長」に他なりません。
学校での日々の学びが足りない、
または効率が悪いという前提のもとで、
追加で自宅学習を行うことが当然視されます。
これによって、学校生活の延長として
「家での残業」が常態化し、
子供たちに無意識のうちに、
時間内で終わらないものは後に回せば良い、
という考えが刷り込まれていくのです。
・テスト勉強としての宿題は問題ない
ここで重要なのは、
テストの範囲を学ぶための宿題は
この問題に当てはまらないという点です。
テスト勉強は自己管理の範疇であり、
自分の成績や理解度に応じて
どれだけ時間をかけるかを調整するため、
企業の「残業」とは異なる性質を持ちます。
むしろ、テスト勉強は個人の責任感や
自己管理能力を育てるものであり、
それ自体が悪いわけではありません。
しかし、課題を提出しなければならない宿題は、
会社での「締め切り」を守るための
残業に似ています。
これにより、時間内で仕事を終わらせる能力よりも、
必要な時間を使えば良いという
認識が強化されるのです。
・学校宿題と会社残業の類似点
では、学校の宿題と会社での残業は
具体的にどのように似ているのでしょうか。
まず、両者ともに
「本来の作業時間外で行う仕事」
という点が共通しています。
学校の宿題は、
授業時間外で行わなければならず、
これは仕事の持ち帰りに似ています。
さらに、宿題が終わらない場合、
翌日に提出しなければならない
というプレッシャーが生じ、
会社での締め切り前の残業と
同じような状況に陥ります。
こうした習慣は、
やがて「仕事は定時で終わらせるものではない」
という意識を育て、
社会に出た後に「残業は当たり前」と
感じるようになります。
学校で「宿題」を出されることで、
子供たちは小さな頃からこの感覚を身につけ、
自然と残業が習慣化するのです。
・残業の習慣化が生む効率低下
残業が習慣化した人々は、
定時内に仕事を終わらせるための工夫
効率的な時間管理を
意識することが少なくなります。
なぜなら、定時を過ぎてからも
作業を続ければ良いという
思考が先行するためです。
その結果、時間内に終わらせるという意識が薄まり、
業務の締め切りに間に合わなかったり、
仕事の質が低下するケースが増えます。
こうした負のスパイラルは、
最終的には個人の生産性を低下させるだけでなく、
企業全体の業績にも悪影響を及ぼす可能性があります。
・宿題とサービス残業の共通点
さらに、家で行う宿題は、
会社でのサービス残業とほぼ同じものだと言えます。
サービス残業とは、
労働時間外に無償で行う仕事のことですが、
学校の宿題も同じように
「無報酬」で行われる労働です。
子供たちは、
宿題をこなすために自分の自由な時間を削り、
時には夜遅くまで
作業を続けなければならないことがあります。
しかし、これに対しては何の対価も与えられません。
むしろ、提出が遅れたり、
質が低かった場合には
叱責を受けることもあり、
これは社会人がサービス残業を強いられ、
成果が出なければ
評価が下がる構図と全く同じです。
・残業文化から脱却するために
このような宿題文化が続く限り、
日本の労働環境における残業体質も
改善されにくいと言えます。
定時内に仕事を終わらせ、
残業を避けるためには、
まずは教育の段階から
「時間内で成果を上げる」ことを教え、
実践させる必要があります。
学校の課題は授業内で完結させ、
家庭では自由な時間を持つことが
奨励されるべきです。
宿題の量を見直し、
家庭での学習時間を
合理的な範囲内に抑えることが、
長期的には社会の生産性向上にも繋がるでしょう。
また、企業においても「残業しないこと」が
評価される文化を醸成し、
効率的な働き方を推奨することで、
残業体質を改善していくことが求められます。
宿題が無くなれば、子供たちが自由な時間を持ち、
自分で考え、創造する力を伸ばすことができます。
そして、そのような習慣を持った子供たちが
社会に出れば、
自然と残業を避け、
時間内に成果を出す働き方が
主流となるでしょう。